夜の帷も下り、月マカ

 夜の帷も下り、月の光が室内にこぼれ落ちてきていた。マカ サプリ貴重な蝋燭をいくつも燃やし室内は煌々と光っている。寝室のベッドであぐら亜鉛 の サプリをかき、酒の入ったグラスを傾けながらレオンハルトは、
 超絶不機嫌だった。
(どうしようかなぁ)
 すぐに空になったガラスに酒を注ぎながらミモザは無言で困る。こうなった原因については、話を昼頃にまでさかのぼる必要クロムの効能があった。

「少しお時間をよろしいでしょうか」
「かまいませんよ。俺になんの用事でしょうか?」
 そう声をかけたジェーンという女性に、レオンハルトは周囲をちらりと目線だけで流し見るとすぐに笑顔を作って鷹揚に頷いた。
(猫かぶりモードだ)
 随分と久しぶりに見た気がする。周りを見渡すとなるほど、通行人や近くのカフェにいる人などがこちらを見ていた。ついでにあれクロムは記者だろうか、こちらに隠れているつもりなのかさりげなくメモ帳にペンを走らせている人もいる。レオンハルトは背も高く非常に目立つ人のため、衆目に晒される場所ではあまり素っ気ないこともできないらしい。
「私は試練の塔被害者遺族の会の者です。最近娘を亡くしまして入会致しました。エリザ、いえ、貴方にはわからない話なのでそのあたりは割愛させていただきますね」
「いえ、わかりますよ。3ヶ月前に亡くなられたエリザ嬢のお母様ですね」
 レオンハルトの返しに彼女は目を見張った。まさマカ と はか前日に未発売のはずのコラムを読んで予習をしていたなどとは予想だにしないだろう。
 彼女は思わぬ切り返しにしばし逡巡した後「では、どういった用件かはわかっていただけると思いますが」と前置きをして深々と頭を下げた。
「どうか、貴方様から教皇聖下に試練の塔閉鎖についてご進言いただけないでしょうか」
 それはかろうじて疑問形を取っているが、明らかな脅しであった。
(まずいなぁ)
 この状況が、である。大勢の人前で切々と訴え頭を下げる女性。要求は塔の閉鎖、盾に取られているのはレオンハルトの評判だ。これで突っぱねるような真似をすればレオンハルトが悪者である。この状況を見ると記者らしき男は実は仕込みではないかと勘ぐりたくもなる。
(レオン様に泥を被らせるわけにはゴーヤ チャンプルーいかない)
 幸いなことにミモザは公的な立場を持たない人間、しかも子どもである。ミモザの監督責任を問われることはあるかも知れないが、それでもレオンハルト自身を追求されるよりは遥かにマシだろう。
 ミモザは一歩前に出ようとして、ぐっとレオンハルトに押し留められた。思わず彼の顔を見ると余計なことはするなと言わんばかりに睨まれる。
 大人しく一歩下がる。それを確認するとレオンハルトはその場に膝まづき、女性の手をうやうやしく取った。
「ご心痛、お察し致します」
「それじゃあ」
 要望が通ったのかと顔をあげた女性に、レオンハルトは痛ましげな表情でゆっくりと首を横に振った。
「本当に、なんとお詫び申し上げればいいか。俺が助けに行ければ……、すべてこのレオンハルトの不得の致すところです」
「えっと……」
 戸惑う女性の手を一際強くぐっと握りしめ、彼は女性の顔を真摯に見つめた。
「俺はできる限りすべての人を助けたいと思アントシアニンっています。しかしこうして力の及ばないことが未だにある。きっと今後もゼロにはならないのでしょう。しかし必ず!精進を重ね、このような不幸な事故を減らしてみせるとお約束致します!」
 その演説に周囲からは「おおっ!」と歓声が上がる。
(うわぁ)
 稀代の詐欺師である。目には目を歯に歯を。レオンハルトはあっさりと話題をすり替え、それどころか周囲の民衆を使ってあっという間にその場の空気を変えてしまった。
 この空気では「自分のせいで助けることが出来なかった」と自分を責めるレオンハルトに下手に言い募れば、悪役になるのは今度は女性の方だろう。
「ええっと、その、私は……」
 このような切り返しは想定していなかったのだろう、女性は言い淀む。それにレオンハルトは何かを察したように頷いてみせた。
 何を察したのかはきっと誰にもわからない。
「ジェーン様、どうか俺に挽回のチャンスをください」
「えっと」
 戸惑ったジェーンはわずかに身体を揺らした。それを勝手に頷いたと受け取って、レオンハルトは「ありがとうございます!」と感極まった声を出し彼女を抱きしめる。
「必ず!貴方のその慈悲に報いてみせます!必ず!」
 そこで身を離すと彼女を亜鉛真っ直ぐに見つめる。
「次は救ってみせます」
 その言葉に周囲から拍手と歓声が起こる。レオンハルトの真摯さを讃えるその場所で、ジェーンはその空気に呑まれたように「き、期待しているわ」と口にすると逃れるように足早に立ち去ってしまった。

 そして現在に至る。昼間に感動的な大演説を繰り広げた当人は、だらしなく布団の上に酒とつまみを持ち込んでヤケ酒をあおっていた。ちなみにこれは今日が特別行儀が悪いわけではなくいつもの晩酌のスタイルである。平民出身でそれなりに貧困層であったレオンハルトは椅子ではなく地べたに座っているのが落ち着く傾向があるらしい。地べたでなくベッドであるのがきっと彼なりの精一杯の配慮だ。
「昼間は機転の効いた切り返しでしたね」
 とりあえず褒めてみた。
「ああいう場合は下手に空気を読まないほうがいいんだ。君も覚えておけ」
「はぁ」
 ミモザには覚えていたところで到底実行できそうもない手段だ。そしてレオンハルトの機嫌は悪いままだ。
(どうしようかなぁ)
 こういう時はジェイドは当てにならない。基本的には有能で困った時に頼るとなんでも解決してしまう彼だが、使用人という立場ゆえなのかレオンハルトに対してはだいぶ及び腰である。まぁ気持ちはわからなくはない。ミモザも最初の頃はレオンハルトの機嫌が悪いとひたすらに怯えていたものだ。
(こういう時亜鉛 の サプリは仕方がない)
 うん、と一つ頷くとミモザは……、黙っておくことにした。
 こういう際にミモザにできることはあまりない。ひたすら給餌に徹し、レオンハルトが話し出したらその話を傾聴するのみである。
 時間はかかるが結局それが一番良い解決策である。
「まったく理解できん」
 しばらく無心でお酌をしていると、ぽつりとレオンハルトはそう溢した。
「なぜ試練の塔を閉鎖したがるのか。そんなことをしたところで亡くなった娘は帰ってこない。ましてや彼女の娘は第5の塔に挑むほどの胆力と技量のある人だぞ。そんな女性が試練の塔の閉鎖を喜ぶとはとても思えん。娘の望まぬことを貫こうと努力するなど……、理解に苦しむな」
 通常試練の塔は番号が小さいほど容易く、大きくなるにつれて危険度が増す。そしてその1番の境目が第4の塔からだと言われている。
 つまりある程度腕に自信のある者しか第4以降の塔には挑まないものなのだ。大抵の人は第3までで止めるため、第4の塔を修めたといえばそれだけで尊敬される。エリザという女性はまさしく第4の塔を修め、第5の塔に挑み帰らぬ人となったのだ。
「僕は少し、……わかる気がします」
 レオンハルトの嘆きに、しかしミモザは素直に頷けなかった。
「なに?」
 彼の眉間に皺がよる。それに苦笑を返してミモザは空になったグラスに再び酒を注いだ。
「これは想像でしかありませんし、ジェーンさんには口が裂けても言えませんが、ちょっとわかる気がします。もしも僕の大切な人が亡くなってしまったら、きっと僕は助けられなかった自分を悔いて、そして今からでも何サプリメント マカかできることはないかと模索すると思うんです」
 レオンハルトが死んだら。ミモザは思う。このままゲームのストーリー通りに進めば彼は死ぬ。そうなったら、知っていたのに防げなかったとしたら。
「死者にしてやれることなどない」
 弾かれたように顔を上げる。見るとレオンハルトは真剣な表情でミモザを見下ろしていた。ミモザは微笑む。
「それでも、貴方が亡くなってしまったら、僕は貴方のために何かできないかときっと必死になってしまう」
 レオンハルトが息を飲む。そこでミモザは自分が不謹慎なことを口にしたと気づいて慌てた。
「す、すみません!不吉なことを……」
「いや、いい……」
 何かを噛み締めるように、思いを馳せるようにレオンハルトは言う。
「続けろ」
「えーと、つまりですね。きっと亡くなったことが受け入れられないんです。だから貴方のために、何かしようだなんて不毛なことを考える」
 ミモザは半ばやけくそで言葉を続けた。彼は黙って聞いている。ミモザは観念した気持ちになって全部吐き出すことにした。
「だって、貴方のためにって頑張っている間は貴方の死と向き合わなくて済みますもん。目を逸らしていられる。だって僕は貴方のために頑張っているから」
 でも、と目を伏せる。
「目的を達成しても、残るのは貴方がいないという事実とそれを認められない自分だけです。だからきっと彼女も目的を果たしても、あまり報われないんじゃないでしょうか。少なくともやったーとは思わないんじゃないですかね」
「なるほど」
 レオンハルトは酒をあおった。先ほどまでよりもそのペースは落ち着いてきている。
「あの、本当に僕の気持ちでしかないので、彼女もそうかどうかはわかりませんよ」
「いや、しかしその理屈ならマカわからなくもない。ただこれ以上犠牲を出さないため、と言われるよりも納得がいく。参考になる」
 それで?と彼は尋ねた。
「どうしたら死を受け入れられる?参考までに聞かせてみろ」
 うっ、とミモザはつまる。そこまで具体的に考えてはいなかった。
「えー、えーと、お墓参り、とかですかね……」
「なるほど?」
 ミモザのしどろもどろの言葉に、彼は眉をひょいとあげて見せた。
亜鉛 の サプリゴーヤゴーヤ チャンプルーゴーヤ

 第4の塔は移亜鉛 サプリ

 第4の塔は移動スキルの手に入る塔である。移動の亜鉛 の サプリ魔法陣サプリメント マカをあらかじめ敷いた場所に瞬間移動できるという祝福が手に入るのだ。
 ステラは今、その第4の塔に1人で訪れていた。
 今日はアベルは別行動で、この間入りそびれた第3の塔に向かってマカ サプリいる。ステラは彼と一緒に行動する気になれず、第3の塔を飛ばして第4の塔に来たのだった。塔の順番は難易度順になっているため数字通りに攻略するのが本来なら望ましいが、別に順番通りでなくてはならないという規則は存在しない。人混みを嫌ってめちゃくちゃな順番で攻略する人は稀にだがいないわけではない。まぁ、そういう人間はおおむね自分の実力を過信していることが多いので、塔の中で行dha方不明になったり遺体として帰ってくることも多かった。
 ステラの右手の甲に、まばゆい光と共に三つ目の金の花弁が収まった。ステラにとっては塔の攻略で命を落とすなど想像もつかないことだ。だってほら、こんなにも順調だ。ステラにとっては塔の攻略などなんの困難もない。
(それなのに……)
 それ以外がうまくいかなかった。いや、うまくいかなくなった、の方が正しい。思えば最初のつまづきはレオンハルトに弟子入りを断られたところから始まっていたのかも知れない、とステラは思う。
(どうして……)
 スdhaテラは視線を落とす。変わったのはステラではない、妹のミモザだ。
 ステラは何も変わらない。村にいた時も王都に来てからも。それなのにここ最近は目に見えてステラの周囲の環境は狂い始めていた。
(ミモザのせい……?)
 思えばレオンハルトもジーンもアベルも、ミモザが関わった人間がステラに対して冷たくなっている。
 ミモザが何かしたのだろうか?
(けど、一体何を……?)
 魔導石の件でも今回の薬草の件でも卒業試合でも、ミモザはステラのことを目の敵にしているようだ。嫌がらせとも言えるような行為に走り、そしてそれは功を奏しているように見える。
 ジーンに「狂っている」と言われた時、ステラは思サプリメント マカわず頭に血が上ってしまった。今にして思えば失礼な言葉ではあるがそこまで逆上するようなことではないようにも思える。しかしあの時、ステラはジーンがまさかそのようなステラを貶めるようなことを言うはずがないと確信していたのだ。
 だからこそ、あるはずがないことが起こったからこそ頭に血が上ってしまったのだった。他にも色々と『起きるはずがないこと』が起き始めていた。それら全てを引き起こしているのがミモザだとしたら。
(でもおかしいわ、ミモザのやることにそこまでの影響力なんてないはずなのに……)
「………?」
 そこまで考えて、ステラは自分の思考に首を傾げた。
 どうしてそう思うのだろう。
 起きるはずがない、ミモザにはそんなことができるはずがないと、どうしてそう確信しているのだろう?
 ずきり、と頭が痛んで思わず手を当てて立ち止まる。
「大丈夫ですか?」
「……ええ亜鉛 サプリ、ごめんなさい、ちょっと立ちくらみがしただけなの」
 かけられた声にそう答えて振り返ると、彼は何故か驚愕の表情を浮かべていた。
(何……?)
「み、ミモザ……?」
「え?」
 驚くステラに彼は慌てたように両手を振る。
「あー、いやごめん、人違いみたいだ。あんまりにもそっくりなもんだから」
 彼は若草色の髪を困ったようにかきあげ、その深い緑色の瞳を細めて笑った。ただでさえそばかすが彼を年齢よりも幼く見せているのに、笑うとさらに子どものように無邪気な印象を受ける。
「俺はマシュー。君の名前を聞いても?」
「わたしはステラよ。えっと、あなたは……」
 ステラは首を傾げた。金色の髪がさらりと流れる。
「ミモザのお友達かしら?」
 彼はまた驚いたように目を見張ると「友達というほど仲良くはないかな」と首を振った。
「君は?」
「わたしはミモザの双子の姉よ」
「なるほど、通りで」
 うんうんと彼は頷く。
「まぁ、中身が似ていないことを祈るよ。俺は優しい人間が好きだからね」
「まぁ」
 その言い草にステラはくマカすりと笑った。

 彼は、試練の塔被害者遺族の会のメンバーなのだと言った。
 ステラでも聞いたことがある。確か数年前に立てこもり事件を起こした人達だ。
「現行の塔の管理はまだずさんなところがある。死傷者を少しでも減らすためにどんな仕組みがいいかを実際に塔の内部を見て回りながら考えていたんだ」
「素敵だわ」
 ステラの相槌にマシューは照れくさそうに頬をかいた。それにステラはにっこりと微笑む。
 ステラにとっては久しぶりに感じるような、穏やかな時間が流れていた。
「今はまだ色々と難しいことも多いけど、少しずつでも変えていければと思ってるんだ。教会との折り合いは難しい問題だけど」
「そうね」
 確か立てこもり事件は彼ら被害者遺族の会の意見を軽視する教会側への抗議として行われたと聞いている。その後和解の記事が流れたが、結局管理体制の見直しが行われたという話は出ていない。
 そこでステラは良いことを思いついて両手を合わせた。
「そうだわ! ねぇ、マシュー。わたしね、聖騎士を目指して頑張っているのよ」
「それはすごいね」
 夢物語を語る子どもをあやすようなマシューの言葉にステラは頬を膨らませる。
「もう、本気にしていないわね。これでもわたし、とっても強いポリ ペプチドのよ。だからね、マシュー」
 にこっ、と花が咲くようにステラは笑いかけた。
「わたしが聖騎士になったら、あなたのお願いを聞いてあげられるわ。わたしが塔の管理体制を変えてあげる!」
 きっとマシューが喜ぶだろうと思って言った言葉に、しかし彼は
「…………」
 顔を両手で覆って悶絶していた。
「……マシュー?」
「昔の夢みがちな自分見てるみたいでキッツイな……」
「え?」
「いや、なんでもないよ。えっと、そうだな。気持ちだけはありがたく受け取っとくよ」
 へらり、と彼は誤魔化すように笑った。
「……? そう……」
 わからないながらもステラは頷くしかない。
 しばらく2人で塔の中をぶらぶらと歩き、そろそろ出入り口が近づいてきたところで、「あれ?」とマシューが声をあげた。
「なぁに?」
「あれ、何してるんだろう?」
 指差した方向を見ると、そこにはステラ達よりも幼い男の子達が4人ほど立っていた。
「あっ!」
 見ているとそのうちの1人が突き飛ばされて尻もちをつく。それを放って残りの3人は塔から出て行ってしまった。
サプリメント マカクロムの効能dha epaクロムの効能

 轟々と風ゴーヤ

 轟々と風亜鉛 サプリが吹いている。
 そこは険しいクロムの効能岩山だった。周囲は鋭く尖った岩ばかりが転がりその合間合間、申し訳程度にわずかに木や草が生えている。
 1人の少女がいた。陽の光を反射するハニーブロンドの髪ゴーヤをショートカットに切り揃えサファイアのように青く透き通った瞳を静かに伏せて遠くを見据えている。
 彼女の視線の先は崖の下。そこには数十、下手をしたら百を超えてしまいそうな数の猪の姿をした野良精霊がうじゃうじゃといた。
「うえー」
 少女は見た目にそぐわぬうんざりとした声でうめく。
「謎の大繁殖だそうだ。以前の熊の狂化同様の異変だな」
 彼女の背後から現れた美丈夫が腕を組んでそう告げた。そのまま彼女の隣へと並びマカ と は野良精霊の群れを検分するように眺める。その視線は険しい。
 よく見ると彼らの背後には教会に所属する騎士と思しき白い軍服を着た人々が控えていた。皆一様に緊張の面持ちで前方の2人を見守っている。
 この場で白い軍服を着ていないのは少女だけだった。
 さらり、と男の藍色の髪が風に流れ、黄金の瞳が横目で彼女のことを捉えた。
「行けるか」
「はい」
 少女はそう明瞭に答えると懐から両手いっぱいの鈴を取り出した。そしておもむろにそれをジャンジャカと目一杯振りながら踊り狂い始める。
 その眼差しはーー本気だ。
「……何をやっている」
「これは、ですね!勝アントシアニン利の確率を高めるおまじないの舞を舞っています!」
「そうか。それはあとどれくらいかかる?」
「えっと最短であと3分くらい、」
「行ってこい」
「あー!」
 言葉の途中でレオンハルトに背中を蹴飛ばされミモザは声をフェードアウトさせながら崖を滑り落ちていった。
 そのあまりにも無情な行為に周囲は総毛立つが当のミモザはといえばおもむろに自身の精霊を防御形態へと変えるとそのお椀型の結界をまるでそりのように崖へと滑らせその上へと華麗に着地した。そのままスノーボードのように精霊の群れへと向けて崖を滑り降りてゆく。
「すぐにー戻りまーす!」
 そのぞんざいな扱いにあまりにも慣れた様子は周囲の同情を誘うには十分だった。

 その一刻後、ミモザの周囲は猪の遺体だらけとなっていた。血みどろになった服を撫でつけてみるが当然そマカ サプリれで血が落ちるわけがない。
「よくやった、ミモザ」
 いつのまにか近くに来ていたレオンハルトがそう言って褒めるようにミモザの肩を叩いた。
「血が付きます」
「ん?ああ、別にいいさ。君がやってなかったら今頃俺がそうなってる」
 そう言うとレオンハルトは遺体の検分に入った。他の騎士達もぞろぞろと現れてにわかに騒がしくなる。
「狂化個体は確認できません」
「大量の巣穴が確認できました。共食いの形跡があることからも急激に増殖が起こったものと思われます」
「……これまでの異常と同じ、か。少しでも不自然な痕跡がないか調べろ。人が踏み入った形跡がないか、他所から群れが移動してきた可能性はないかを特に重点的にな」
「はっ」
 レオンハルトの指示に一度報告に訪れた面々が再び散っていく。
「まぁ、これまで同様、期待はできんがな」
 レオンハルトは難しい顔で腕を組んだ。

 この世界でお金の単位はガルドという。ミモザの感覚では概ね1ガ亜鉛ルドは1円と同等くらいだ。
「今回の手伝いの報酬だ」
 そう言ってレオンハルトはミモザに金貨を渡した。渡されたのは小金貨だ。小金貨は一枚約1万ガルドである。それが3枚。3万ガルドだ。
(結構儲かるなぁ)
 命がかかっていると考えると安いが、1時間の労働に対する報酬としては高い。
 ちなみにこれは相場からすると安めである。理由はこれは本来ならレオンハルトに下された任務であり、ミモザは修行の一環として代行しているという立場だからである。レオンハルトは時々こうしてミモザに経験を積ませるためのアルバイトを持って来てくれる。
 このお金は一応教会から、ひいては大元の国からレオンハルトに対して出る予定らしいが、支給されるのはまだ先のためレオンハルトのポケットマネーから先払いでもらっている。
 要するに、これはレオンハルトからのお小遣いである。
「戻るか」
「よろしいのですか?」
 まだ探索中の他の騎士達を見てミモザは首を傾げる。それにレオンハルトは肩をすくめてみせた。
「もう一通りは確かめたし仕事はこれだけじゃない。後は彼らに任せて俺は次の仕事にうつる」
「おーおー、じゃあ俺もご一緒させてもらおうかね」
 そこに新たな声が降って湧いた。レオンハマカ サプリルトはその声に眉をひそめる。
「ガブリエル」
「よう、聖騎士様。お前さんが働き者なおかげで俺はサボれて嬉しいぜ」
 ガブリエルと呼ばれた男は30代半ばほどの男だった。濃いブラウンの髪と瞳にやや浅黒い肌をした色男だ。皆と同じ白い騎士装束をやや着崩している。しかしその肩にかけられたマントと勲章が彼が高い地位の人間であることを示していた。
「重役出勤とはさすがだな」
「そうツンケンするなよ。お兄さんにも色々と仕事があってだなぁ……。そっちのお嬢さんが噂のお弟子ちゃんか?」
 彼は口の端だけをあげてニヒルに微笑んだ。
「俺はガブリエル。姓はない。ただのガブリエルだ。これでも教会騎士団団長を務めている」
 手を差し出される。
「よろしくさん」
 握り返した手のひらは厚く、戦士の手をしていた。
ゴーヤマカ と はdha epa

「仕事だ、ついマカ

「仕事だ、ついて来い」亜鉛 サプリ おすすめと簡潔に言われてほいほいついて行った先サプリメント マカが王宮だった。
 おかしいとは思ったのだ。えらい身綺麗にされて化粧をほどこされドレスを着せられたから。
「え、なん、なんですか?」と若干怯えて尋ねるミモザにレオンハルトは真顔で言った。
「害虫退治だ」
「それってゴ……」
「そサプリメント マカの名は口にするな」
 実はゴから始まる4文字の虫が大の苦手なレオンハルトである。あれはいつのことだっただろうか。いつものようにミモザが王都に滞在した夜、屋敷に出現した例の虫の姿を見つけて、ミモザは初めて自分の師匠が逃げ出す姿を見た。ちなみにその時はミモザが退治した。
 レオンハルトはごほん、と一つ咳払いをすると、
「その虫じゃない方だ。まぁ、行マカけばわかる」
「はぁ」
 まぁ虫なら得意だから別にいいか、と安易に考えたのがつい先ほどの話である。

 現在ミモザは王都のレオンハルト邸で厄介になっている。これは何もミモザに限ったことではなく、塔の試練に挑むほとんどの者が王都に滞在することになるのだ。なぜかというと7つの塔は王都を取り囲むようにして存在しているため、王都に滞在するのが攻略に効率的だからだ。
 王都には塔の試練に挑む者限定の宿屋まで存在するほどである。試練に挑むことを推奨する国が支援金を出しているため、他の宿屋よりも安く泊まれたりする。もちろんいつまでも試練マカ と はに挑んでいるのだといって居座られては困るため、割引は一年間のみという制限はある。ミモザも宿屋に泊まろうか迷ったのだが、レオンハルトに頼みたい仕事もあるからと誘われたのでご厚意に甘えさせてもらうことになった。
 そしてその滞在初日の仕事がこれである。
(ちょっとよくわからない)
 きょろきょろするとレオンハルトに行儀が悪いと叱られるので必死に平静を装う。しかし内心はいまだに混乱中だ。
「ええと、レオン様、虫は……?」
「今追い払われたから問題ない。そのまま虫除けをしていろ」
「はぁ……」
 しれっと返された言葉は相変わらず要領を得ない。意味がわかっていないミモザに、レオンハルトは意地の悪い笑みを浮かべた。
「君の外見はいいな。虫除けにぴったりだ」
dha epa dhaあー……」
 そこまで言われてやっとミモザも察する。周囲をちらりと見ると若い女性陣はひそひそと何事かを話し合っているが近づいては来なかった。
「かえって余計な刺激をしてしまうのでは?」
 その中に鬼の形相でこちらを睨む女性を2人ほど見つけ、訊ねるミモザを彼は鼻で笑った。
「君の容姿を見て挑む度胸のある女性は稀だ。よほど自分の容姿やそれ以外に自信がなくてはそんな真似できないだろう」
 まぁ確かに、とミモザは頷く。自分の容姿が優れている自覚はあった。何せ主人公と瓜二つの顔である。良くないわけがない。
 こればかりは感謝せざるを得ない。これで容姿まで正反対でミモザだけ不細工であったら本気で立ち直れる気がしない。製作者からの温情か、キャラデザをサボっただけかはわからないが、なにはともあれありがたい話である。
「まぁつっかかって来そうなのもいるが、死にはしないさ」
「死なない程度の目には合うんですか?」dha epa dha
 ミモザの質問にレオンハルトは答えず肩をすくめた。
「たいした派手なご登場だなぁ」
 その時、聞いたことのある声に話しかけられた。振り向くとそこに立っていたのはガブリエルであった。
 彼も今日は制服ではない正装をしており、ブラウンの髪を後ろに撫で付けて伊達男っぷりに磨きがかかっている。黒のスーツの胸元には赤い薔薇が飾られていた。
「オルタンシア様は?」
「あっち」
 彼はレオンハルトの問いに簡潔に答える。そこには誰かと談笑しているオルタンシア教皇の姿があった。彼はさすがにいつもの法衣を身にまとっている。
 あたりを落ち着いて見回すとフレイヤとジーンの姿もあった。彼女達もいつもの制服ではなくパーティー仕様で、フレイヤは真っ赤なドレスに身を包んでいる。
(今頃お姉ちゃん達は宿屋だろうか)
 きらびやかな世界を眺めながらぼんやりと思う。若干自分は今何をしているのだろうと疑問には思うが、ゲームのストーリー通りに進んでいるのなら今日は特にすることはないはずだ。
 今日はゲームで言うと旅立ちのdha日だ。ショートカットして道なき道をきたミモザとは違い、ステラは街道を進んで王都まで来たはずである。つまり倍以上の時間をかけて今頃王都についたのではないだろうか。まぁ、ヒッチハイクや乗り合い馬車に乗るなどをすれば14時間よりは短い時間で王都には辿り着けるだろう。確かチュートリアルボスとの戦闘もその途中にあったはずだ。まだ仲間として選択できるのはアベルだけのはずなのでアベルと2人で行動しているのだろう。
(確か次の攻略対象との遭遇は王都での買い物中だったか)
 ゲームのシステムは午前と午後の行動を大雑把に選択できるというもので、買い物にいけばそれだけで午前中は潰れる。そして最初はチュートリアルとして装備を整えるために午前中に買い物に行かされるはずだ。つまり明日の午前中にその攻略対象と出会うはずである。あまりどういった人物だったか思い出せないが、確か『知り合いと間違えて声をかけてしまった』というベタな出会い方だった気がする。 
(つまり明日の午前中に僕は第1の塔に行けば鉢合わせずに済む)
 明日は朝早くに家を出よう、と考えていると、その思考を引き裂くように荘厳な演奏が始まった。
 ぎょっとして顔を上げる。
「本日のメインのご登場だな」
 ガブリエルが囁いた。
「メイン?」
「決まってるアントシアニンの効果だろ?第一王子殿下さ」
 彼は陽気にウインクをして見せた。
アントシアニンの効果アントシアニンクロム

 レオンハルトサプリメント マカ

 レオンハルトから見て弟子であるミモ亜鉛 サプリザはバ亜鉛 の サプリカである。
 いや、決して頭が悪いわけではない。ないのだが、なんというか行動がバカだ。
(何をやっているんだ、一体)
 窓からは爽やかな早朝の光が差し込んでいた。小dha鳥はピチュピチュとかなんか楽しそうに鳴いている。
 実に麗しい朝の光景だ。
 目の前にぶら下がる大量の謎の黒いぼんぼんと、それを脚立に座って黙々と量産する弟子の姿がなければの話である。
 レオンハルトは自らの寝室の惨状を見てベットの中で盛大にため息をついた。
「何をやっているんだ、君は」
「あ、おはようございます」
 師匠の目覚めに気づいた弟子は嬉しそうにdha epa目を細めて笑う。小首をかしげて振り返った拍子に髪が揺れて柔らかなハニーブロンドが陽の光を反射した。
 その光景はたいそう良い。
 見た目だけは一級品の弟子がとても美しいのは眼福で素晴らしいのであるが。
「何を、やっているんだ、君は」
 レオンハルトは再度ゆっくりと区切りながら弟子に問う。
 それにああ、と軽くうなづくと彼女は実に真剣に自明の理を語るのがごとく堂々と告げた。
「おまじないです」
 レオンハルトはすんでのところで舌打ちを飲み込んだ。
 それなりアントシアニンの効果に出来のいいはずの弟子はどうにもこの『おまじない』とやらに傾倒しており、時々こうしてレオンハルトには理解しがたい珍妙な行動にでる。
(業務に従事している間は問題ないのだが)
 ため息と共に布団を避け、ベッドに腰掛けた。
 彼女はレオンハルトの指示には忠実だ。修行だって真面目にこなす。しかしちょっと放っておくとこれである。
「今度は一体なんのおまじないだ」
「幸運のおまじないです」
「幸運?」
「はい」
 美しい弟子は楚々と近づいてくるとレオンハルトの髪を丁寧にすきながら、本日の服を示してみせた。
向かって右側は私用の際に着る礼服、左側はいつもの正装である軍服である。
 2つハンガーにかけて並べて提示されたそれを見て、今日は再び教会へ行かなくてマカはならないことを思い出しレオンハルトは向かって左側を無言で指で指し示す。それに彼女は軽くうなづくとその服を手に取り着替えを手伝い始めた。
 問題ない。本当に、業務に従事している間は実に文句のつけようのない仕事っぷりである。
 『おまじない』さえなければ。
 こんな非合理的なことはやめろ、と一刀両断しようとしてレオンハルトは口を開き、
「レオン様の今日がきっと良い日でありますようにと思いまして」
 すんでのところで口をつぐんだ。
 これである。
 これのせいで未だにレオンハルトは弟子の奇行をやめさせられないのであった。
 ミモザはそんなレオンハルトの心中など察さずテキパキと準備を進めている。最後の仕上げにハンカチをそっとポケットへと入れられた。
「………」
 レオンハルトは知っている。そのハンカチにもびっしりと『おまじない』の文言が刺繍されているのを。
もはやその亜鉛 サプリ犠牲者はレオンハルトの所有するハンカチの8割を超えていた。10割に達する日も近いに違いない。
(まぁ、誰が悪いかと言えば俺が悪い)
 一言やめろと言えばやめるのだ、ミモザは。
 ハンカチにしても一応刺繍をする際に報告は受けていた。その時に咎めなかったレオンハルトの責任である。
 まぁ別に大して困ることもないし、と内心で言い訳をする。
 せいぜいがハンカチを人に見られた際に気まずい程度のことである。
 食事の支度をしに食堂へと足早に向かうミモザの後ろをゆっくりと歩きながら、レオンハルトは今日のハンカチを取り出して眺めた。
 そこには古代語で『どうか風も波も日の光も、貴方に優しくありますように』という祝詞が丁寧に刺繍されていた。

 教皇の執務室の窓からは柔らかな光が差し込んでいた。それは女神の描かれたステンドグラスを優しく照らし出し、色のついた光を地面へと映し出す。
「申し訳ありませんね、レオンハルト君。連日呼び出してしまいまして」
「いいえ」
 レオンハルトは優しく微笑むオルタンシアに簡潔に亜鉛の効果首を横に振ると報告書を差し出した。彼はそれを受け取り中身をパラパラと見ると「確かに」と頷く。それは昨日のミモザが行った野良精霊退治の報告書であった。昨日教会を辞した後にわざわざ自宅まで伝令が来たのだ。いわく『報告書の提出を明日の昼までにして欲しい』と。
(まぁ、方便だろうな)
 目的は別にあるのだろうとレオンハルトは察する。こんな報告書の提出など急ぐ理由が欠片もない。レオンハルトと2人きりで話したい用事があったのだろう。
 レオンハルトとオルタンシアはそれなりに長い付き合いである。レオンハルトがまだ騎士ではなく精霊使いであった頃、その才能を見いだし騎士になるようにと勧めたのがオルタンシアなのだ。
 興味がなさそうに、しかし一応用件を聞くために立ち去ることをせずその場に留まるレオンハルトに、彼は苦笑した。細いすみれ色の瞳がきゅっと更に細まる。
「そう嫌そうな顔をしないでください。まぁ怒られそうな気はしていますが」
「そんな、俺が貴方に怒ることなどありえません」
 レオンハルトの優等生然とした返事にオルタンシアは気まずげに頬をかいた。
「これを見てもそう言えますか?」
 どさどさどさ、と音を立てて机に分厚い冊子のようなものが積まれる。目線で中亜鉛 の サプリを確認してよいかを尋ねるとオルタンシアは「どうぞ」と手のひらを向けて促した。
 レオンハルトは一番上に積まれた冊子を開ける。
 すぐに閉じた。
 一応他の用件も混ざっていないかと一縷の望みをかけて他の冊子の中身も一通り確認する。
「オルタンシア聖下」
「ふふふふ、いやぁ、申し訳ありません」
 怒られそうなどと言っておきながら、その顔に浮かぶ笑みはどこか楽しげだ。
「お見合い、受けていただけませんか?」
「お断りします」
 間髪入れない返答だった。そのままレオンハルトはすばやく身を翻す。
「では俺はこれで失礼します」
「いやいやいやいや、待って待って待って待って」
 オルタンシアは慌てて身を乗り出すとレオンハルトの服の裾を掴んだ。
「頼みますよ、話だけ、話を聞くだけでいいですから」
「ひとまず聞きましょうか。どういった理由があって俺にこれを?」
 オルタンシアは真面目な顔になった。そのまま深刻そうに手を組んで告げる。
「いやね、結婚をすることで君の生活にも張りとゆとりと充実感がー…、待って待って待ってください、まだ帰らないで!」
 レオンハルトはとりあえず足を止めると痛む頭を抑えてため息をついた。
 その息は重々しい。
「そのような気遣いは不要です。ご存知でしょう。俺はそういったことが不得手だ」
「まぁそれは知っていますが、こういうのは慣れだと思うのですよ。それに正直、誰かを選ばねば今の面倒な状態はゴーヤずっと続きますよ」
 『面倒な状態』の心当たりに思い当たってレオンハルトは危うく舌打ちをしそうになる。自宅の執務室には貴族の令嬢からの縁談の打診や交流会の誘いが大量に積んであった。そのレオンハルトの反応にオルタンシアは苦笑する。
「君には貴族より平民の女性の方が合うと思うのです。ですので、教会騎士団の女性騎士はどうかと」
「………」
 貴族がレオンハルトを取り込みたがっているように、教会側もレオンハルトを引き込みたがっている。正直レオンハルトはオルタンシアのことは仕事人として尊敬している。とても優秀な方だ。これまで色々と世話になったこともある。だから教会寄りのスタンスを取っているという部分もあるのだ。しかしそれとこの話は別である。
 レオンハルトは、自身が誰かから愛されているという確信を得たことがない。
 幼い頃に一度カーラからは愛されているのではと思ったことはあった。しかし彼女は結局自分と自分の息子のためにレオンハルトのことを切り捨てた。それを責めるつもりはない。実に適切な対応であったと思う。レオンハルトが逆の立場であったなら迷わずそうするだろう。しかし彼女とレオンハルトの関係性がその程度であったことは確かな事実である。
 好意を伝えられたことはある。情熱的に求められたことも尊敬されたこともある。しかしそれは全てレオンハルトの持つ能力と地位、名声に対するものであって、レオンハルトというどうしようもない人間に対するものではなかった。
 今回の釣り書きの女性達も同様だろう。もしかしたらレオンハルトがこういう人間性の持ち主でゴーヤあることを知らず、聖騎士として愛想良く振る舞っている時の姿しか知らない可能性もある。そんな人間が妻としてそばにいるなど全くもってぞっとしない話だった。
 もしレオンハルトが怪我や病気で役立たずになった時、きっとそばには誰も残らないだろうとレオンハルトは確信している。それはしょうがないことだ。だってレオンハルトにはそういう人間関係しか築けないのだ。
 人と関わるのは疲れる、相手の都合に合わせるのは時間がもったいない、腹を割って話すなど気持ちが悪い。
 そんな人間を大切に思う人などいない。
(いや、もしかしたら)
 彼女ならば違うだろうか。レオンハルトのことを好きと言った少女。泣きそうな顔で恩人だと言った。役に立ちたいと言い、いまだに挫けずレオンハルトについて来て、レオンハルトがどんな態度を取ろうが失望するそぶりを見せない彼女ならば。
 レオンハルトはハンカチの入ったポケットを無意識に握りしめる。
 彼女ならば、レオンハルトが役立たずになった後もそばに居続けてくれるだろうか?
(愚かな思考だ)
 レオンハルトは自身のあまりにもらしくない考えに頭を振る。
「申し訳ありませんが、貴方の頼みでもこのような話は受けられません」
「……そうですか」
 深く自分の思考へと潜り込むようにしながら少しうわの空でそう告げるレオンハルトのことを、オルタンシアは探るような冷静な眼差しで見つめていた。
ポリ ペプチドマカ サプリゴーヤdha epaアントシアニン

「構えないのゴーヤ

「構えないのですか?」
 ジーンは不思議そうにミモザにそう問いかけた。ミモザは亜鉛の効果それにふふん、と余裕dha epaの表情を返す。
「先に言っておきます。ジーン様、降参するなら今のうちですよ」
 オルタンシア教皇聖下は言った。『強い精神的ショック』を与えろと。
 つまり本人の元dha々の性質や精神を刺激により呼び覚ませばいいということだ。
 それはミモザの得意分野である。
「………同じセリフを返しておきましょう」
 ジーンはわずかに警戒するように目を細めた。そしてこれ以上の話し合いは不要と言わんばかりに剣を構えて見せる。
 それを見てとって、ミモザは一歩前へと進み出た。
「ジーン様」
 そしてその場で軽くくるりと一回転した後、ゴーヤ チャンプルー可愛らしくスカートをつまむ。
 小首をかしげてみせた。
「僕のような可愛いらしい金髪美少女に、暴力を振るうのですか?」
「うっ」
 途端に彼が葛藤するように動きを止めた。
 にやり、とミモザは笑う。
 これが秘策である。
 何もなんの理由もなく、こんな動きにくい格好をしてきたわけではないのだ。
 ミモザは容赦なく攻撃を続ける。
「武器も持っていない金髪美少女相手に」
「う、くぅ……っ」
「ほらほら、スカートですよー、ヒラヒラですよー」
「う、うう……アントシアニン
 もう一押しだ。相手は相当弱っている。
 ミモザは最終兵器を出すことにした。
「ジーン様……」
 こっそりと隠し持っていた目薬をさす。目もとがうるうるといい感じに湿った。
「あなたはそんな酷いことはなさいませんよね?」
 上目遣いでぶりっこポーズをとる。
「………くっ」
 ジーンはがくり、と地面に膝をついた。
「僕の中の非モテ男子が……っ、例え相手がミモザさんだろうと金髪美少女に暴力は良くないと訴えている……っ!!」
「失敬な」
 ミモザは素早く駆け寄ると膝をついたジーンに容赦なく手刀を叩き込んだ。
 ジーンがぱたり、と音を立てて倒れる。
 ミモザはそんなジーンのそばで両手の拳を構えてスタンバイした。頭の中ではカウントダウン亜鉛 サプリが開始する。
 ワン、ツー、スリー。
 脳内で勝利のゴングが鳴り響く。
「アイアム、ウィナー!」
 ミモザは構えていた拳を天高くへと突き上げて勝者のポーズを取った。
 ミモザ、大勝利である。
「………もう少し女の子と遊ばせるべきなのかしら」
 その弟子のていたらくを見ていたフレイヤが、思案するようにそうつぶやいた。

「何やってるんだ、あいつは……」
 それを見ていたマシューは呆れたようにぼやいた。
「まぁまぁ、そう言ってやるなよ」
 そんなマシューにガブリエルが声をかける。
「お前さんも今にそんなことは言ってられなくなるさ」
 そう言って彼はジェーンの肩を促すように軽く押した。ジェーンはその理知的な瞳を悲しげに伏せると、何かを決心したかのように顔を上げ、前へと進み出る。
「マシュー」
 そうして静かに口を開いた。
「わたしは、貴方を助けるために鬼になるわ」
「………? 一体何を……」
 訝しアントシアニンの効果げに目を細める彼に、ジェーンはバックから何かを取り出した。それは一冊の本である。
 そこには幼い文字で『にっきちょう』と書かれていた。
 マシューは顔色を変える。
「そ、それは……っ」
「貴方の妹さんに事情を話して借りてきたのよ。マシュー、わたしは今からこれを……」
 ジェーンの瞳がひたり、と真剣にマシューを見据えた。
「音読するわ」
「や、やめ……」
 止めようとするがもう遅い。ジェーンは本を開いた。
「おとなりにすむライラちゃん、きょうもとてもかわいいです。しょうらいけっこんしてくださいとおねがいしたら、いいよといってくれました」
「ぐあああああっ!!」
 マシューは耳を塞いで叫ぶ。しかしジェーンは続ける。
「きょうライラちゃんがだれかとあるいているところをみました。ライラちゃんにだれかをきくと、こまったかおでカレシだといいました。カレシってなんだろう?」
「や、やめ、やめて……」
「しょうらいはライラちゃんとおおきなおうちでしろいいぬといっしょにくらしたいです。おしごとはみみずをとるおしごとをします」
「ひいいいいクロムいっ」
 その光景を見てガブリエルはつぶやいた。
「えぐいなー」
 ミモザもそれには同意だ。
 子どもの頃の淡い思い出を人前で暴露されてわなわなと震えるマシューにミモザは同情しつつ、他人事として見守った。
 ちなみにこの作戦の提案者はミモザである。
「きょうおかあさんにカレシってなにってきいたら……」
「や、やめてくれぇ!!」
 たまらずマシューが白旗をあげた。
「……戻る気になったかしら?」
「なった! なったから!!」
 そこまで叫んではっ、とマシューは目を見張る。
「俺は、どうして……。今までなにを……?」
「解けたみたいだな」
「解けたみたいですね」
 その様子を見てレオンハルトとミモザは頷く。
 ふぅ、とミモザは汗を拭う仕草をして物憂げにため息をついた。
「とても尊い犠牲でした……」
 主に成人男子としての尊厳とかプライドとか。
「君だけは敵に回したくないな」
 無表情に淡々と、レオンハルトはそう言った。
サプリメント マカアントシアニンの効果アントシアニン

 しかし突亜鉛の効果

 しかし突き飛ばされた場所が悪かった。彼は起きあがろうとして地面に手をつき、その亜鉛 の サプリ手が地面に飲み込まれた。
「……dha epa…っ!?」
 草に隠れてよく見えないが、そこは沼であった。この第4の塔はところどころにわかりにくい沼が広がっており、歩ける地面はちゃんと目で見ればわかるようにはなっているものの、よく注意していないと足を踏み外してアントシアニンの効果しまう危険がある。野良精霊に襲われたり、転んだら最後、底なし沼から自力で這い出るのは困難である。
「捕まって!」
 ステラとマシューは駆け寄るとその手を掴んで引っ張り上げた。ずるり、と泥まみれの男の子が沼から引きずり出される。
「大丈夫か?」
 マシューが尋ねると堰を切ったように少年は大声を出して泣き出した。そのままぐずぐずと話し始める。
 いわく、今のは学校のクラスメイトである亜鉛 サプリこと、
 いわく、いじめられていること
 いわく、無理矢理連れてこられて突き飛ばされたこと
「……ひどい」
 ステラは表情を曇らせる。
「下手をしたら生死に関わるな」
 マシューも難しい顔でつぶやいた。
 ここは第4の塔である。野良精霊も出現する塔だ。
「……教会騎士の管理はどうなっているのかしら。こんな子を中に通すだなんて、万が一があったら……。いじめも見抜けないだなんてやっぱり管理方法はもっと厳重にするべきだわ」
 ステラは憤然と言った。それにマシューは困ったように眉をゴーヤさげる。
「いじめかどうかの判断は難しいよ。本人達が違うと言ったら、資格を満たしていた場合は塔に受け入れざるを得ない」
「でも塔は危険な場所なのよ? ここがあるせいでただのいじめが殺人になってしまうかも知れない! ちゃんと抗議しなきゃ!」
「ちょ、ちょっと!」
 そのまま出入り口を管理する騎士に突撃しようとするステラをマシューは慌てて腕を掴んで止めた。
「まずは男の子に怪我がないか確認させてくれ!」
 そう言ってマシューは男の子の全身を確認すると、小さな擦り傷を見つけてそこに手を当てた。
 柔らかい光がじんわりと灯って傷が早送りのように綺麗に塞がる。
「大丈夫かい? 他に怪我は?」
「だ、だいじょうぶ……」
「そうか、大変だったな」
 なんとか泣き止んだ泥まみれの少年を亜鉛 サプリ おすすめよしよしと自身が汚れるのも厭わずにマシューは撫でる。少年の目はその優しさに再びうるみ始める。
「あ、あー…、うちには帰れそうか? 送っていくか?」
「ひぐっ、か、帰れるぅ」
「じゃあ入り口まで一緒に行こうか」
 3人で時々少年の泥を落としてやりつつ出入り口へと近づくと、入場管理をしている騎士の中で若い騎士がその様子に気づいて走り寄ってきた。
「どうされました? 救助は必要ですか?」
「もう怪我は治したから問題ないよ、でも事件として報告をあげてもらいたい」
 事件、の言葉に彼は息を呑む。
 試練の塔の内部では原則利用者同士の揉め事は御法度である。事件というのは野良精霊や試練による負傷以外の人為的な被害を意味していた。
 マシューが詳しく報告をしようと口を開くと「そうなの!」と元気よくステラが先に言葉を放った。
「この子、学校のクラスメイトにいじめでここに連れてこられて沼に突き飛ばされたのよ! 今回亜鉛 サプリはたまたまわたし達が見ていたから良かったけど、そうじゃなければ今ごろ命に関わってたかも知れない! どうしてこの子達のことを中へ通したの? 怪しいとは思わなかった?」
「どうしてって……、その、明確な理由がないと拒むことはできませんので……」
 若い騎士は戸惑うように言葉を濁す。それにステラはむっと眉を寄せた。
「貴方達は問題意識が低いわ。塔の管理が甘いせいでただのいじめが殺人事件になるところだったのよ。危険な塔の管理を任されているんだから、それなりの……」
「ステラ!」
 マシューが鋭く遮る。それに騎士はほっと息をついた。
「どうしたの? マシュー」
 ステラはそれに訝しげに返す。マシューは呆れたように首を横に振った。
「どうしたのじゃないよ、彼を責めるのは筋違いだ」
 その言葉にきょとんとして、少し考えた後にステラは頷いた。
「そうね、教会の管理体制の問題だもの。もっと上の立場の人に言うことよね」
「それはそうだけどそうじゃないよ」
 ふぅ、とマシューは疲れたようにため息をつく。
「例えばの話だけどさ、今回はいじめに塔が使われたけど、彼らがこの子を川に放り込むことだってあり得たとは思わないか亜鉛 サプリい? 誰にでも近づくことのできる川の管理が甘いとその地域の役所を責めるのはちょっと無理があるだろう? 今回のもそれと同じだよ。悪いのはいじめというイレギュラーな行動をする連中で教会騎士にすべての問題の検出は不可能だ。そりゃあ
川に柵を立てたりはできるだろうけどそういう奴らは柵を乗り越えて同じことをするだろう。今回のは事故じゃなくて事件だからね。報告して改善策は練った方がいいだろうけどそんなに喧嘩腰で言うようなことじゃない」
「……っ、でも!」
「君が今回の件を真剣に考えてくれているのはわかるよ」
 マシューはなだめるように笑いかける。
「けど一つのことにこだわり過ぎて他の人の都合に盲目になるのはよくない。……まぁ、俺が言えたことじゃないんだけど」
「……ミモザみたいなことを言うのね」
 ステラの言葉に彼は「うっ」とうめいて胸を押さえた。
「ま、まぁ、受け売りなのは否定しないよ。あんな残酷に人のメンタルをえぐる奴にあんまり感謝はしたくないけど、まぁ、いっぺん精神的にぶん殴られたおかげで視野は広がったよね……」
 ああ、あの時の騎士団の人間はこういう気持ちだったのかなぁ、とマシューはうつろな目でステラにはよくわからないことをぶつぶつとつぶやく。
「どうして……」
 ステラはそんな彼を呆然と見つめた。頭の中で『何か』がおかしいと騒マカ と はぐ。
 おかしい。村ではみんなステラに同意してくれたのに。おかしい。ミモザの言うことばかり優先されるなんて。おかしい。アベルがステラのことを否定するなんて。おかしい。マシューがステラの言葉を受け入れないなんて。
 おかしい。
(前はこう言えば喜んでくれたじゃない)
 そこまで考えてステラははっと我にかえる。
(『前』ってなに?)
 頭がずきずきと痛む。マシューとはこれが初対面のはずだ。
「ステラ?」
 頭を押さえて黙り込むステラに、マシューは不審げに声をかけた。
「頭が痛むのか? どこかにぶつけた?」
「……いいえ、なんでもないの」
 ステラはにっこりと笑う。本当はなんでもなくなんてない。ステラは傷ついている。マシューが裏切ったからだ。
(裏切るってなに?)
「ちょっとめまいがしただけなの。この後に用事があったのを思い出したわ。あとは任せてもいいかしら?」
「え? あ、ああ、大丈夫だよ。お大事に」
 ステラは少年とマシューに微笑みかけ、ついでに若い騎士を見た。彼はその視線に嫌そうに身をすくめる。
(わたしが悪いみたいな顔をしないでよ)
 不愉快な気持ちがステラの中で渦巻く。けれどそれ以上は何も言わずに立ち去ることをステラは選択した。
 これ以上今のマシューと言葉を交わしたくはなかった。
マカ サプリサプリメント マカdha epa dhadha epa

「さて、それは困る亜鉛の効果

「さて、それは困るのぅ」
 黙り込んだ面々のゴーヤ チャンプルー中、唯一ずっと笑dhaみを消さなかった老人が口を開いた。ロランだ。彼は鈍色の目をギラギラと興奮に光らせていた。先ほどまでは老人らしく腰を曲げていたにも関わらず、今は真っ直ぐとその背すじを伸ばし、かくしゃくとした雰囲気を出している。
dha epa教会からの使者としてお主らのような小娘と小僧が来た時は放っておけば誰か死ぬかと思ったが、思いの外やるようだ。それは困る、困るのぅ」
 身の丈を遥かに超えた長い槍を彼は構えた。
「まぁわしは誰が死んでしまってもかまわん。全員死んでもらってもなぁ」
「……っ!気をつけろ!そいつは保護研究会の過激派だ!!」
 マシューが叫ぶ。瞬間、雷鳴が轟いた。
サプリメント マカ……っ」
 ミモザはすぐさま防御形態でそれを防いだ。チロの半球状の盾をつたって落雷は地面へと流れる。
 雷はロランの槍の先から放たれていた。
「ジーン様!ジェーン様とええと、なんかそっちの緑の人の避難を!」
「緑の人じゃなくてマシューですけどね!?」
「マシューさん!こっちへ!」
 ごちゃごちゃと騒ぎながらも、ミモザは3人を背後へとかばって立ち、ジーンはマシューとジェーンを抱えるようにして後ろへと下がらせた。しかしこの塔の出口はロランの背後である。
 ロランはニヤリと笑うと懐から五角形の黒い金属板を印籠のように取り出して見せマカた。
「なんじゃ、気づかれておったか。ならば名乗ろう。わしは保護研究会、五角形のうちの一角、ロランじゃ。よろしくなぁ」
「……五角形」
 ミモザはつぶやく。ロランの持つ五角形の向かって左下には金色の印がつけられていた。確かステラの恋愛対象の中にもそう言った肩書を持った人間がいた気がするが、よく思い出せない。天才キャラだったような気もするが、どうだっただろうか。
「なんじゃ、気になるか?」
「……いえ、貴方みたいなのがあと4人もいるのかと思うとうんざりしただけです」
 ミモザは誤魔化す。ロランもさほど気になったわけではないのだろう。槍を構え直した。
「余裕ぶっておるが、内心では焦っておるのではないか?」
「なぜですか?」
 ふん、と馬鹿にしたように彼は笑う。
「先程から散々野良精霊から亜鉛あいつらを庇っていたんだ。もう魔力も限界じゃろう」
「……さぁ、どうでしょう」
 魔力とはゲームでいうMPのことだ。通常のRPGよろしくこの世界でもMPが切れれば魔法は使えなくなる。魔法というのは先ほどロランがやってみせたように槍から雷を放ったり、ミモザが普段やっているようにメイスの棘を伸ばしたり衝撃波を放ったりというものだ。平均的なMPの量は150~200といったあたりだ。そしてゲームの中のミモザのMPは150が最大であったと記憶している。
 つまり平均の下の方である。
 ちなみにステラはすべてのイベントやアイテムを駆使すれば最高で400まで上がる。特に頑張らなくてもストーリーを進めるだけで300までは普通にいく仕様である。
 つまり、ミモザの2倍である。
(悲しい……)
 レオンハルトのMPなどは記憶にないが、どうせ化け物じみているに決まっている。
 これが才能の差か…、と遠い目になっているーー、場合ではない。
 まゴーヤた雷鳴が轟く。今度は受け止めることはせず、ぎりぎりまで引きつけてから避けた。先ほどまでミモザが立っていた地面がえぐれ、クレーターのように穴が開く。
(当たれば最悪死ぬな)
 これ一発でMPをどれほど消費しているのだろうか。魔法によって消費MPは異なるが、これだけ威力があれば10ほどは消費していそうだ。だいたいの魔法の消費MPは5~10くらいのものが多い。稀に30~50ほど消費するものもあるが、それは小さな町を一つ滅ぼすとか、広大な土地に結界を張るとか、大概は道具と準備を必要とするような大規模の魔法だけだ。
 とはいえMPは減るばかりではなく時間経過で回復するものである。だいたい起きている時だと20~30分で1ほど回復するのが一般的である。つまりロランは先ほど休憩を挟みながらとはいえ、100匹近くの野良精霊を倒したミモザのMPがそろそろ切れることを見越して、ばかすか魔法を撃ってきているのだろう。ちなみにミモザは一回の攻撃で3~4匹ほどまとめて屠っていたりもしているので厳密にMPをどのくらい消費しているのかをクロム計算で求めるのは至難の業である。
 もちろん、相手の最大MPや現在残っているMP量を知る方法は存在する。それは女神の祝福である。最初の塔の攻略により、その能力が手に入るのだ。とはいえ実は祝福には金・銀・銅のランクがあり、それぞれにより見える範囲に違いがある。金であれば相手のレベル、最大MP量、MP残量の全てを見ることができるが、銀ではレベルと最大MP量だけ、といった具合にだ。ちなみに銅だとレベルも大雑把にしかわからないらしい。らしいというのは塔の試練を受けていないミモザには詳細がわからないからだ。でもゲームでは確か最初に難易度の選択が可能で、イージーでは金、ノーマルでは銀、ハードでは銅に最初の試練の塔で与えられる祝福は設定される仕様であった。
 そしてゲームの中のミモザは銅であった。
 つまり自動的にハードモードのゲームが開始する予定である。今のところ。
(悲しい……)
 内心でぼやきながらも次々と襲いくる雷撃を避け続ける。そうしながらメイスをさりげなく地面へと叩きつけた。
「……ちっ」
 ロランが舌打ちをして横へと飛ぶ。メイスからの衝撃波が地面を走りロランの足元まで亀裂を生じさせたのだ。その体勢を崩した隙を逃さずミモザは棘を伸ばした。
 伸ばした棘がロランの目にささるーーと、思われたゴーヤ直前に彼は胴体をそらせてそれを避ける。棘は残念ながら、彼の目の下あたりを少し引っ掻くだけで終わった。
「小娘が……、狡い真似を」
 悔しそうな顔を作った後で、しかし彼は再びニヤッと笑う。
「先ほどから攻撃が単調でみみっちいのう。お主、もしや属性攻撃が使えんのか?」
「はい」
 間髪入れずにミモザは頷いた。
 属性攻撃というのはロランのしたような雷など特徴的な攻撃のことである。これは大抵の人は1つは属性を持っているものであり、2つ以上あれば天才と呼ばれる部類のものだ。つまり属性攻撃を持たないというのは『落ちこぼれ』ということである。
 しかしミモザはそれがどうした、という顔をしてみせる。
(それがどうした!)
 ふん、と鼻息荒く胸を逸らして見せた。
「………うん、そうか、なんかすまんかったな」
 おそらく挑発しただけのつもりだったのだろう。なんか同情されてしまった。
 ちなみに名誉のために言っておくがこれは半分嘘で半分本当だ。
 元々ミモザは属性攻撃を持っていなかったが、狂化により一つだけ目覚めた。
 しかしそれはあまり強力なものではなかったのである。
「あ、ちょっと本気で悲しくなってきた」
「まぁ、世の中そういうこともあるわい。才能とは無慈悲なものじゃ」
「同情ついでに見逃しませんか」
 一応聞いてみた。
「それは無理じゃ」
 即答の上で更に雷撃を叩き込まれた。ミモザは避けた。
亜鉛 の サプリアントシアニンゴーヤ チャンプルークロムの効能

 チロを構ゴーヤ

 チロを構える。そのまま大きく振りかゴーヤ チャンプルーぶると、目サプリメント マカの前にいる敵へと向かってー……、
(違う……っ!!)
 直前でミモザは理性を取り戻した。しかし振りかぶった手の制御がきかない。目の前の景色がチカチカと赤と白に明滅を繰り返す。
「……っ、お前は僕のものだろうが……っ!dha epa dha!」
 あまりの怒りにミモザは怒鳴っていた。その瞬間、身体のコントロールがミモザの手の内へと戻る。
「うんん……っ!」
 唸る。モーニングスターメイスの無数にある棘のうちの一つが振った勢いに合わせて槍のように伸び標的を突き刺そうとするのをーー、
 直前でその軌道を無理やりずらした。
「……っ」
 息を呑む。棘はレオンハルトの脇に生える木を貫いた。
 それにレオンハ亜鉛 サプリルトはわずかに眉をひそめただけだった。おそらく直前で軌道が変わり、自身に当たらないことを悟ったのだろう。微動だにせず、けれど油断なく剣を構えて立っていた。その身体からは適度に力が抜けており、どこに攻撃を仕掛けてもすぐに対応されてしまうであろうことが素人のミモザでもわかった。
 その場に沈黙が落ち、膠着状態に陥る。
 ふっふっ、と荒い息を漏らしながら、ミモザは身体を支配しようとしていた狂気が引いていくのを感じていた。
「君はーー、」
 レオンハルトの声にびくりっ、と身をすくませる。
「ち、違うんですっ、いや、違わないんですけどっ、違くてっ、あのアントシアニン、襲うつもりなんてこれっぽっちも……っ」
そこまで半泣きで言ってから、棘がまだ木に突き刺さったままなことに気づき慌ててそれを戻す。
「あのっ、ごめんなさいっ!!」
 そのまま敵意がないことを示すために頭を深々と下げた。
 顔を上げられない。
(どうしよう……!)
 涙が溢れた。
(怖い)
 アベルなど比較にもならない。そこには圧倒的な強者がいた。
 その気になればミモザのことなど赤子の首をひねるように殺すことができるのだと、本能でわかる。
(いや、おそらく殺されはしない)
 心の中で必死に言い聞かせる。殺されはしない。相手は聖騎士である。殺人鬼ではない。
 けれど捕まってはしまうだろう。または処置としてチロを取り上げられてしまうかも知れない。
 守護マカ サプリ精霊との接続を切り離すことは原則禁止だが、狂化個体に関しては適切な処置として行われることがあった。
「ふむ、自力で抑え込んだか」
 その声音には面白がるような感心するような響きがあった。彼はそのままミモザの近くに散らばる野良精霊の遺体を見て目を細める。
「いい腕だ。教会に引き渡すのは惜しいな」
 その言葉に思わずミモザは顔を弾かれたように上げる。
 その顔は恐怖と涙でぐちゃぐちゃだ。
 彼は悠然とミモザを見返すと、顎に手を当て思案するように首を傾げた。
「君、一生その狂気と付き合う気はあるかい?抑え続ける自信は?」
 にっこりと微笑んで、彼はまるで明日の天気でも尋ねるような調子でそう問いかけた。
 その笑顔はとても爽やかで整っているのに、ミモザには何故か悪魔の微笑みに見える。
 しかしこの悪魔に気に入られなければ未来がないことだけは理解できた。
「あります!」
 食い入るように答える。
「……素直に教会で『処置』を受けた方が楽だぞ。一生ゴーヤ チャンプルー自らの業に振り回されて苦しみ続けることになる」
「それでも……」
 ぐっ、と唇を噛み締める。
「それでもいいです。自分のこの、感情を手放すくらいなら」
 きっとチロを手放せばそれと引き換えにミモザはこの憎しみも妬みも投げ出せる。
 しかしそうした時のミモザは果たしてこれがミモザ自身であると自信を持って言えるだろうか。
 チロはミモザ自身だ。ならばチロを失ったミモザはもう元のミモザではないだろう。
 嫉妬も報復も、元々愚かな選択なのは重々承知だ。
「いいだろう」
 レオンハルトは満足げに頷いた。
「見逃してやる。君は自由だ」
 その言葉を聞いた途端、ミモザの体から一気に力が抜けた。しかし疑問は残る。
「……なぜ、」
「わからないか?君にならわかるはずだ」
「……?」
 そう言われてよくよく目を凝らす。レオンハルトは何も隠すことはないというように剣を翼獅子の姿へ戻すと両手を広げてみせた。
 その姿はどこからどう見ても愛想の良いただの美形だ。
 立っているだけできらきらしい。
 けれどミモザは歪みにも似た違和感を覚えた。
「あなたは、」
「うん?」
「あなたも、狂気に囚われているのですか?」サプリメント マカ
 肯定するように彼はにやり、と笑った。金色の目が肉食獣のような獰猛さで輝く。
 そしておもむろに右目を覆う前髪を手でかきあげた。
「……あ」
 そこには右目全体を潰すように火傷のような傷跡があった。まつ毛もないその右目の瞼がゆっくりと開かれる。
 ぎらぎらと輝く紅の瞳が真っ直ぐにこちらを射抜いた。
 慌てて翼獅子を確認する。しかし彼のオーラはまばゆいばかりの白色で、特に黒い塵のようなものは混ざっていない。
 しかしそれなのに何故かわかる。目の前の彼が自分と同類なのだと。
 そこにはシンパシーのような運命共同体に出会ったかのような何かが確かに存在していた。
「これをやろう」
 差し出されたのは彼の髪を結っていたリボンだ。黒色のビロードで出来たそれは黄色く透き通った石と、それを守るように描かれた黄金の翼獅子の刺繍がされたいかにも高価そうなものだった。それを外した途端に彼の翼獅子からは黒い塵が濃密に噴き出し、その瞳が赤く染まる。
 ミモザはその光景に目を見張った。
 彼は苦笑する。
「これについている宝石は実は魔導具の一種でね。幻術を見せる効果がある。大したものは見せられないが狂化の兆候を誤魔化すくらいの効果はある」
 ミモザは戸惑い、逡巡した。正直に言えば喉から手が出るほど欲しい。これがあれば今後の憂いが大きく減マカるのは間違いなかった。けれど、
「でもこれがないと貴方が……」
「ああ、俺は家に帰れば予備がもう一つあるからいいんだ。それよりもこれがないと君はすぐにでも捕まってしまうよ」
 どうにも詐欺にも似た怖さを感じる。
 しかし悩みながらも結局ミモザはおずおずと手を伸ばしてそれを受け取った。
 その様子にレオンハルトは目を細めて微笑む。
「いいこだ。これがあれば同じように狂化した相手以外は騙せるだろう。狂化した者同士はなんとなく感じ取れてしまうのだよ。困ったことにね」
「……どうしてこんなによくしてくださるのですか」
「君には才能がある」
 間髪入れずに言われた言葉にミモザは目を見開いた。
「君は精霊との親和性が高いな。それは精霊騎士を目指す上ではとても素晴らしい才能だ。そしてその上で狂気に引きずられない意志の強さがある。正直感情のままに狂気に飲まれるようなら教会に引き渡すつもりだったよ。けれどコントロールできているなら誰に迷惑をかけるわけでもない。わざわざ取り締まる必要性を感じないな」
「………」
 その言葉を聞きながらもミモザの疑心暗鬼は収まらなかった。それをレオンハルトも察したのだろう。「そう警戒してくれるな」と苦笑する。
「……まぁ、共犯者の優遇だよ。俺も人間だからな。判断基準はわりと不公平なんだ」
 そう告げると彼はミモザを安心させるようにおどけた仕草でウインクをしてみせた。
「では、俺はこれで失礼するよ。せいぜいバレないように気をつけるんだな、検討を祈る」
 パッと手を上げて颯爽と身を翻す姿は潔く、どこまでマカも爽やかだ。
 しかしその身と守護精霊から噴き出す濃密な闇の気配がそれを裏切って禍々しい。
「え、えっと……」
 ミモザは焦る。
 彼は恐ろしい。自分の命を簡単に脅かすことのできる存在への恐怖は拭えない。ーーけれど、
「待ってください!!」
 気づけばミモザは彼を引き止めていた。彼は怪訝そうな顔をして振り返る。
(……う、)
 ミモザなど比較にならないほどの濃密な黒い塵の濃度と威圧感に身がすくむ。
「あ、あの……」
 ごくり、と唾を飲む。恐ろしい。恐ろしいがこれを逃したら、きっとミモザに次のチャンスはない。
「ぼ、僕を貴方の弟子にしてくだひゃいっ!」
 ミモザは盛大に噛んだ。
マカ亜鉛の効果クロムの効能亜鉛 の サプリ

 ガチャン、マカ

 ガチャン、という音を立ててその扉は閉まった。
「あ、あなたがdha悪いんだからね!」
 捨て台詞と同クロム時にパタパタと遠ざかっていく足音がする。どうやら彼女は立ち去ってしまったようだ。
「うーん」
 閉じ込められた……のだろうか?ミモザは首をひねった。マカ サプリ
 まず扉を押してみると何かつっかえがしてあるのか開かない。だがメイスで叩けば壊すことは可能だろう。次にミモザは月明かりの差し込む窓へと近づいた。
「開くんだよなぁ、これが」
 カシャ、と軽い音を立てて窓が開く。窓の外は庭園で、別にとんでもなく高くて外に出れないというわけではない。
 さて、閉じ込めるとはなんぞや?と疑問に思う。
「窓から外に出るという発想がお嬢様にはないのかな……」
「チゥー…亜鉛 サプリ おすすめ
 チロも同意するように頷く。あまりにも詰めの甘すぎる監禁だった。
 もしもミモザを本気で閉じ込めようと思ったら、まずはチロを拘束しなくてはならないし、ついでにミモザのことも手足を縛るくらいはしなくてはならないだろう。そうでなくては普通に破壊して出てきてしまう。
「まぁ、今回は壊さないけど」
 一体弁償代がいくらかかることか。想像すると寒気がしてミモザはぶるりと身を震わせた。
 さて、それでは外に出ようかと窓枠に手をかけたところで、
「……ん?」
 人の気配に思わず隠れる。隠れてから別に隠れる必要がdha epaなかったことに気がついたが後の祭りである。
 かくして近づいてきたのはオルタンシア教皇とオーティス宰相であった。
「………薬は、……で、」
「しかし……の、効果……」
(薬……?)
 2人はぼそぼそと小声で話しながらゆっくりとミモザの隠れている窓の前を通り過ぎ、遠ざかって行った。前を通り過ぎるといっても距離があったため、その内容はあまり聞き取れない。
(仲が良いんだろうか?)
 考えながらもまさかな、と思い直す。宰相などは貴族の筆頭であろうし、教皇はいわずもがな平民の代表である。派閥的に仲睦まじく、というのは難しい立場だろう。だからこそこうして密会のようにこっそり会っている可能性もなくはないが、それよりは仕事の話をしているというほうがしっくりくる。
 さて気を取り直して、とミモザは窓枠に手クロムの効能と足をかけるとそのまま外へとぴょんっと身軽に飛び降りた。
 ぴ、と体操選手のようにポーズを決める。
「10点!」
「何が10点なのかしら?」
 その言葉に振り返る。そこには、
「フレイヤ様!」
 が立っていた。彼女は赤いドレスに黒いショールを羽織っていた。銀色の髪は綺麗に結い上げられて真珠の髪飾りで彩られている。月明かりに照らされたその体は、銀色の粒子をまといきらきらとほのかに輝いていた。
 ミモザはその姿にうっ、とうめく。
 彼女の抜群のプロポーションが眩しい。
「どうしたのかしら?」
「ちょっと世の理不尽に目が眩んでしまって……」
「ちょっと意味はわからないけど大丈夫そうなのは伝わったわ」
 体調が悪いのかと心配したじゃない、と彼女は嘆息する。
「あなた、今1人?」
「はい。フレイヤ様もですか?」
「ええ、ちょっと夜風にあたりたくて……」
 そう言いつつ彼女の目は何かを探すように彷徨っている。
(なんだ…クロム…?)
 パッと見た印象だが彼女の装飾はどこかが欠けているという様子もなく彷徨う目線の高さ的にも地面を探している様子はない。何かを落としたとかでは無さそうだ。
「ジーン様はご一緒ではないのですか?」
「ああ、ジーンは今日はご家族もいらしてるからそっちと一緒にいるのよ」
「なるほど」
 ジーンの素性はよく知らないが、王国騎士団長の弟子になるくらいだ。やんごとない家柄なのだろう。
「じゃあ、わたくしはそろそろ行くわね」
「はぁ……」
 声をかけておきながら随分とつれないことだ、と思いながらその後ろ姿を見送る。
「………ついてってみる?」
「チゥ」
 ついていこう、とチロが頷く。フレイヤはミモザに連れがいないのかを尋ねて、いないことを知ると明らかに興味を失ったようだった。つまり誰かと一緒に来たのではないかと疑ってミモザに声をかけたのだ。
(でも誰だろ?)
 探し人がレオンハルトならば、たぶん普通にミモザにレオンハルトはどこにいるのかと尋ねただろう。しかしそれをしないということはミモザには居場所がわからないであろう相手、その上ワンチャンミモザと一緒にいてもおかしくない相手を探しているとdhaいうことだ。
(鬼が出るか蛇が出るか)
 庭園の生垣で作られた迷路の中へと姿を消したフレイヤを、ゆっくりと追跡する。ミモザが追うのでは気づかれる可能性が高いためチロを斥候に使い絶妙にお互いの姿が見えない距離を保ちながら進む。
(おっと)
 これ出れるかなぁ、と不安になりつつ歩いていると、唐突にフレイヤが立ち止まった。彼女はぼんやりと立ち尽くし、迷路の先を眺めているようだ。
 手で合図をしてチロに様子を見てきてもらう。しばらく待つとチロは走って戻ってきて、そこで見た光景を伝えてくれた。
 迷路の先にはガブリエルがいたのだ。それも、先ほどホールでミモザを睨んでいたもう1人の令嬢、セレーナ嬢と一緒だったようだ。
(なんでその2人が?)
 教皇と宰相に引き続き謎のペアである。首をひねるミモザの目の前で、フレイヤはその2人のことを憎々しげに睨んでいた。

「フラフラついて行くなと言っただろうが」
 ホールに戻るとレオンハルトが仁王立ちでミモザを見下ろしてそう言った。
 その顔は険しい。
「えっと、レオン様、違うんです」
「何が違う」
「筋肉にも胸にもつられてません」
「じゃあ何に釣られた」
「こ、好奇心……?」
 はぁ、と彼は深い深いため息をつく。
「俺はとても簡単な指示を出したと思っていたが、その認識は誤りだったか?」
「ええと、レオン様と結婚したがっている令嬢の方がでdhaすね」
「……どっちだ」
「ピンクブロンドのほうです」
「アイリーンか」
 ちっ、と小さくレオンハルトは舌打ちをする。ミモザは頷いた。
「ええ、そちらの方に、ちょっと監禁されてきました」
 ミモザが続けて言ったセリフに、レオンハルトはなんか変な言葉を聞いたというようにその顔をすがめる。
「……出れたのか」
「窓が普通に開いたので」
「…………。万が一ということもある。そういう場合は知り合いに声をかけるなりして軽率について行くのは控えなさい」
 さすがに彼も少し呆れた様子だ。閉じ込めた部屋の鍵がかかっていないなど、監禁というにはあまりにお粗末である。
「はい、申し訳ありませんでした」
 とりあえずレオンハルトの態度が軟化してきたのでミモザは言い訳をやめて素直に謝罪した。
「……帰るぞ」
「よろしいのですか?」
 身を翻すレオンハルトに追従しながらもホールを見渡す。パーティーはまだ終わる気配を見せてはいない。
「ああ、君がいない間に一通りの挨拶は済ませた。問題ない」
「……申し訳ありませんでした」
 ミモザはもう一度丁寧に謝罪をした。
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